えいぶるの里・おはようの家 社会就労センター・多機能型事業所

小山市北部、思川のほとりの長閑な田園地帯である東島田・三拝川岸に、障害を持たれた方たちの社会就労を目的とした福祉施設があります。一般的には、授産施設や社会就労センターという名称で呼ばれていますが、そういった名称でカテゴリーをくくって事業内容を説明したとしても、明るく笑顔に溢れ、希望に満ちたこの施設を、十分に説明しきれるものではない気がして残念でなりません。

街ぐるり特集・第一回目でご紹介するのは、社会福祉法人ソフィア会の社会就労センター えいぶるの里・おはようの家です。障がいを持たれ、就労が困難な方々に働く場を提供するとともに、働くことの知識や技術獲得のための支援や活動を様々な形で行っている施設です。実は、記者自身にも障がい者の兄弟が居り、父母の苦労や不安を目の当たりにしてきたので今回の取材には特別な思いがありました。取材により、以前から気に掛かっていた社会福祉施設というものに直に触れることができ、改めて、福祉とはどういうものなのかを考えるきっかけになりました。街ぐるりをご覧の皆様にも社会就労センターとはどんなところなのかをお伝えし、福祉についてもっと身近なものとして考えるきっかけになっていただければと思います。

施設開所までの歩み

シャープペンシルの組み立て作業
社会福祉法人 ソフィア会の設立は、今から20年以上前に遡ります。当時の国分寺養護学校(現在の国分寺特別支援学校)に通う子ども達の保護者から上がった、より良い施設を作って欲しいという声を受けて、初代理事長 荒川行雄さんが地域の方達の支援と協力の下立ち上げたものです。
学校卒業後の子ども達の将来の不安と、保護者や父兄も当然な事であるが高齢化していく中で、我が子を自立させていかなければならない、その不安や焦りはどれ程のものであったのでしょうか。我々が「大変ですね。」などと安易に言葉を掛けられるものではなかったことに違いありません。「心から安心して我が子を託せる施設を」、という保護者の切なる願いを実現すべく、ソフィア会は設立されました。
初めは、通所者5名、職員4名からのスタートでした。施設と呼ぶにはあまりにも小さい部屋でのボールペン組み立て作業を通所者、職員総出で行ったそうです。施設としての環境が十分に整っていたわけではありませんが、あかるく、なかよく、たすけあって、たのしくのスローガンの下、ソフィア会は走り出したのでした。
その後、ボールペンやシャープペンシルの組立て作業だけではなく、障がいの程度や適性に応じた作業や支援を行う施設へと変わっていきました。


『EMボカシ』作り

EMボカシ(300g・100円)


EMとは、Effective Microorganisms(エフェクティブ・マイクロオーガニズムズ)の略で、有用微生物群のことです。世の中に数ある微生物の中でも有用な微生物を集めたもので、さまざまな汚れをきれいにして腐敗菌を抑える働きを持っています。

そのEMと糖蜜を混ぜた混合液を、米ぬかやもみ殻などに加えてよく混ぜて、三か月~四か月間の熟成後、天日で乾燥させた商品がEMボカシです。
その使い方はいくつかありますが、一般的なところでいうと、家庭から出る生ごみにこのEMボカシを混ぜて堆肥を作ったり、EMボカシを直接畑に撒くことにより肥料や土壌環境を改善させ植物の健全な発育を促したり、さらには、畜産や水産にも使用できたりとその用途は多岐にわたります。この商品の効果は、大変興味深いものなのでEMボカシだけで一つの記事ができてしまう位です。
さて、このEMボカシの作業は、基本的に外仕事です。作業をする皆さんは、分担して仕込みや乾燥の工程をのんびり、のびのびと作業しています。仕込みを行っていた作業者は、ポリバケツに入ったボカシの材料に種ボカシ(完成したボカシ)を板前が塩をふる様な慣れた手つきで丁寧に振り掛けていました。時折記者たちに見せる屈託のない笑顔に心が和み、ほのぼのとした気持ちになっていると、気づけば、他の工程の作業者達も我々の近くに来ては気さくに挨拶や声をかけてくれました。

乾燥の作業は晴れた日にしかできないので、これからの夏に向けて辛い作業になりますが、作業者それぞれが得意な事や個性に合った役割分担で作業をしていました。ブルーシートに熟成したEMボカシを広げると、フルーティーな香りが辺りに立ち込めます。そして、ここでも私ににっこりと微笑みかけてくれ、皆さんの人懐っこさにこちらも自然と笑顔になってしまうのでした。


『焼き菓子・パン』作り

クッキーの製造作業


EMボカシの他にも、クッキーなどの焼き菓子やパン・ジャムの製造・販売にも取り組んでいます。パンもクッキーもできる限り天然素材にこだわり、必要最低限の保存料で健康で安全な手作り感のある商品を作っています。
派手さはありませんが、シンプルで飽きの来ない味です。世間で色んな物がありふれているからこそ、素朴を大切にして、深く長く食べて頂きたいとの思いで作業者が真心こめて作っています。

記者のおすすめは、米粉パンとショコラケーキとクッキーのバニラ味!! 米粉パンは驚くほどにフワフワでもちもち。生地は柔らかいのに程よい歯ごたえがあり、噛むほどに米の旨みが口に広がります。ジャムやバターを塗らなくてもそのままで十分美味しくいただけます。さらに3個入りで150円という良心的な値段なので、本当はこの記事で紹介せずに独り占めしていたかったんです(笑)
ショコラケーキはドイツ産のチョコレートと北海道産の小麦粉を使用した本格スイーツに仕上がっています。まるで生チョコのようにとろける触感。是非、よく冷やしてお召し上がりください。少し冷凍庫に入れて軽く凍った状態で食べるのがおすすめです。

最後にクッキー・バニラ味。バターのコクとバニラの香りがあとをひく美味さです。口に入れるとホロホロと崩れるやわらかな食感。手作りクッキーの味わいに懐かしさを感じます。
えいぶるの里には、焼き菓子・パンの工房があり、そこで出来上がった商品は少し離れた『おはようの家』にある販売所『アイスとおかしとパンの家』で販売されています。こちらの店舗にはアイス工房があり、業務用の機械を導入し、自分たちが育て収穫したブルーベリーを使ったアイスや季節ならではのアイス、地元企業とタイアップしたソルベなどを製造しています。店舗のレジの奥に工房があるので、タイミングが良ければ作業の様子も見ることができます。


手芸やいろいろな創作活動


さき織りのバッグ


さて、次は販売所『アイスとおかしとパンの家』に隣接する、『おはようの家』をご紹介しましょう。
こちらでは、作業・労働というよりも利用している皆さんの障がいや適性、個性に応じて自分のペースで自分が得意な事を、思い思いに活動をしています。
紙をちぎるのが好きな人には、ちぎり絵などの創作をしてもらい、細かい作業が好きな人には羊毛フェルトの作成、手織り機でコースターやバッグ、小物入れなどを編む作業などを、それぞれが自由に楽しく行っています。
羊毛フェルトで作った猫、犬、パンダや蛙などのキャラクターはとても可愛らしく、そのキャラがキーホルダーやストラップになったり、耳かきの柄に付いていたりと、全くもって、かわいいもの好きな人間の心をことごとく虜にしてしまうものばかりです。羊毛フェルト以外にもかわいいアイテムの種類は非常に多彩で、どれもこれも欲しくなってしまいます。
おはようの家では、これらの創作活動を“生きがい活動”と位置づけ、楽しみながら作業をして何かを作り上げる喜びを皆さんが生き生きと分かち合っていました。

利用者のほんとうの生き甲斐を追究して

基本理念「愛情と誠実」
現在、社会福祉法人ソフィア会は多様な就労環境を整え、利用者のみなさんの障がいの程度や適性、個性に合った作業を提供している。作業内容の充実や就労支援だけではなく、生活介護や自立支援、児童デイサービス等の日中一時支援事業にも取り組んでいます。さらに、今年の一月から計画相談支援事業が本格的に始動しました。家と作業所としての往復としての施設だけではなく、利用する障がい児者の地域で生活するためのプラン作成(将来設計やライフプラン等)、行政的な事から医療、心のケア、家庭生活の面まで、困っている事や難しくてなかなか出来ない事をトータル的に支援する事業です。
福祉は、施設とそれを利用する人のみで成り立っているものではありません。元来、福祉とは「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味する言葉であり、すべての市民に最低限の幸福と豊かさの支援を提供するものだそうです。要するに基本的人権と豊かさを守ることを意味するものでしょう。福祉は障がい者や老人だけのためにある言葉ではなく、私達のすべてに関わりあうことなのです。
私達の幸せは、自分一人で成り立っているわけではありません。多くの人の支えや協力によって一人の幸せはなりたっている、障がい者も全く同じなのです。決して特別な存在ではありません。他人事のように無関心でいてはダメで、お互いに支え合い、協力し合わなければ自らの幸せもないのだと、改めて気づかされた、今回の取材でした。

えいぶるの里
〒323-0003栃木県小山市東島田2403-20285-22-4561

営業時間
09:00~16:00
定休日
無し